
先日、引っ越しをするため、途中で仕事を抜けさせてもらって、地元の不動産屋にマンションを案内してもらったのですが、その時の一場面です。
営業マン 「この家いいでしょ?」
僕 「思ったより大分広いですね〜」
営業マン 「そうなんですよ。あそこに扉がありますけど、あれを取ってしまってリビングと
つなげて一部屋にしたら、開放感があって気持ちいいですよ」
僕 (扉を取り払うなんて想像もしていなかったので) 「えっ?」
営業マン 「あの扉、どけてしまったらかなり広いし、気持ちいいでしょ?」
僕 「うわぁ、確かにそうですね。すごい良さそうですね!」
営業マン 「気持ちいいと思いますよ。リビングがこれだけ広ければゆったりできますよね」
僕 「何だか楽しくなってきました(笑)」
この会話の後、すぐにこの部屋を正式に契約しました。
僕が見てきたマンションの中で、特別に優れたマンションだったわけではありません。営業マンの一言がなければ、最終段階で少し迷ったかもしれません。この部屋を契約したいというモチベーションが、営業マンの一言で一気に高まったのです。
今回のテーマでもある社内の人材活性化というテーマは、コーチング、研修、表彰精度、人事評価制度と話題は事欠きません。本屋に行けば、いやと言うほどこういった種類の本を目にします。以前、マネジメントに悩んだ時期、僕はこの種の本を読み漁り、色々な方法を実行してみました。しかし、ほとんど成果は上がりませんでした。
様々な試行錯誤をした中で感じている人材活性化の本質は、上に書いた営業マンと僕とのやり取りにあるように思えてなりません。
僕は、会社からの距離・駅からの距離・広さ・駐車場・立地など、かなり条件を絞ってマンションを探していましたから、リビングの開放感や居心地の良さはほとんどあきらめていたのです。それを知ってかどうかは分かりませんが、営業マンはその不可能が可能になる提案をしてくれたのです。ほとんど諦めかけていたものが手に入れられるかもしれないという希望が、僕のやる気に火をつけたのです。
このやり取りは売り手と買い手のやり取りですが、社内の活性化も全く同じだと思うのです。
人のモチベーションが高まる瞬間は、「不可能であると思い込んでいることが、実現できるかもしれないと感じた瞬間」だと思います。
これは、マンションの契約だろうと、仕事だろうと変わらないはずです。
社員が不可能だと思っていることを可能にする現実的な、かつ、具体的な方法を提供するのが、経営者や管理者の役割です。上の例の営業マンのような役割です。
この営業マンはマンションの構造を変えたわけでも、特別に素晴らしい(けれども高価な)マンションを紹介したわけではありません。僕があきらめかけていた要望を実現する具体的な方法を提供してくれただけです。
経営者や管理者は、上の営業マンの役割をもっともっと膨らませ、大きな次元で話をする必要があるという点が違うだけです。
これほどシンプルな話なのですが、それでもマネジメントが難しいのは、ほとんどの人は、自分の理想の状態というのをほとんど理解していないからです。
社員に、「夢は何だ?」と聞いたって出てくるはずはありません。自分の理想の状態なんて普段は考えていないからです。答えが出てくる人の方が特殊ですよね。
だから、1人1人の社員がどんな状態が理想だと考えているのか、それは、経営者や管理者が社員と話をしながら把握をしていく必要があります。そして、本人すら気づいていない、素晴らしい、理想的な状態を手に入れるための具体的・現実的な方法を提供してあげるのです。
これらの活動がモチベーション高い組織を作るためには必ず必要だと思います。
社員の不可能が可能になる組織、モチベーションが上がらないはずはありません。
巷で言われているモチベーション向上策は、こういった本質的な活動を押さえた上での施策だと思います。枝を変えようとしても、幹が変わっていなければすぐに元に戻ってしまうのです。
褒めるマネジメントが重要だといわれることもありますが、どれだけ褒められたって、日々の惰性で仕事をしている社員は、全く変わらないのです。人事評価性度も表彰精度も同じです。カンフル剤にはなりますが、それだけでは、中長期的に見れば大きな変化は生まないのではないでしょうか。
多くの人が不可能だと感じていることを可能だと感じ、それを具体的・現実的な方法として伝えていくことが経営者や管理者の仕事だと思います。とても難しい仕事ですが、それ以上にやりがいがある仕事ですよね。
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